基礎知識
コールセンター分析の基本|主要KPI・4つの手法とAI活用で解決できる業務

コールセンターには、通話録音やアンケートなど多くのデータが蓄積されているにもかかわらず、うまく活用できていないと感じていませんか。応対品質は企業の印象や売上に直結するため、データに基づく分析なしに改善を続けるのは簡単ではありません。
本記事では、コールセンター分析が必要な理由から、主要なKPI、代表的な分析手法、従来手法の限界、AI分析で解決できる業務、AI分析ツールの選び方までを解説します。自社の改善サイクルを回す手がかりとして役立ててください。
コールセンター分析が必要な理由
コールセンターの応対品質は、企業のイメージや売上に直結します。データに基づく分析の仕組みがなければ、改善のサイクルも回らないでしょう。
ここでは、なぜコールセンター分析が必要なのか、その理由を掘り下げます。
顧客満足度低下・競争力低下を招くから
顧客は、コールセンターでの顧客体験を通じて企業への印象を形づくります。そのため、応対品質の良し悪しは、そのまま企業ブランドの評価につながります。
例えば、電話がつながりにくい状態が続くと顧客の不満が積み重なることから、応答率が一定の水準を下回ると、企業イメージが損なわれるリスクが急激に高まるでしょう。しかし、分析の仕組みがないままではどこに問題があるのかを把握できず、コストや品質、顧客満足度が改善されないまま、競合他社に差をつけられてしまいます。
蓄積されたデータが活用されず埋もれているから
コールセンターには、通話録音や応対履歴、アンケート結果など、品質改善に使えるさまざまなデータが毎日積み上がっています。通話録音を導入している企業は多いものの、実際にはトラブル対応時の確認用にとどまり、分析には使われていないといったケースが少なくありません。
これらのデータを正しく分析すれば、顧客ニーズの傾向把握やサービス改善の根拠として活用できるうえ、経営層へ説明する際の材料にもなるでしょう。
【カテゴリ別】コールセンターの主要品質指標(KPI)

ここでは、コールセンターの主要な品質指標(KPI:重要業績評価指標)を、接続品質・応対品質・生産品質・処理品質という4つのカテゴリに分けて解説します。
接続品質:応答率・放棄呼率・ASA
接続品質とは、顧客が電話をかけて最初に体感する品質です。電話がつながらない時点で用件に入る前から企業の印象が下がるため、ほかのカテゴリと並行して、最優先で管理したいKPIカテゴリといえます。
代表的な指標は、応答率・放棄呼率・平均応答速度(ASA=Average Speed of Answer)の3つです。それぞれの指標の概要と評価の目安は次の表のとおりで、早期の異変察知が改善の起点になります。
指標 | 概要 | 目安 | ||
|---|---|---|---|---|
応答率 | 着信のうち応答できた割合 | 一般に90%以上が目安 | ||
放棄呼率 | 着信のうち応答する前に切れた割合 | 低いほど良い(数%以内を目安) | ||
ASA | 着信から応答までの平均時間 | 短いほど良い(20秒以内が1つの目安) | ||
応対品質:FCR・モニタリングスコア・CSAT
応対品質は、オペレーターの対応そのものの質を表すKPIです。代表的な指標は、一次解決率(FCR=First Call Resolution)・モニタリングスコア・顧客満足度スコア(CSAT=Customer Satisfaction Score)の3つです。
顧客満足度に直結する領域のため、定期的なモニタリングが欠かせません。
指標 | 概要 | 目安 | ||
|---|---|---|---|---|
FCR | 最初の対応で問題を解決できた割合 | 高いほど良い | ||
モニタリングスコア | 評価項目に沿って対応内容を採点したスコア | 基準に対し高いほど良い | ||
CSAT | 対応への満足度を顧客の評価により測る指標 | 高いほど良い | ||
生産品質:AHT・稼働率・ACW
生産品質は、対応の効率を表すKPIです。単体で目標を設定するのではなく、応対品質や接続品質のKPIと組み合わせて、バランスを見ながら評価することが大切です。効率だけを追うと品質が下がりかねません。
代表的な指標は、平均処理時間(AHT=Average Handling Time)・稼働率・平均後処理時間(ACW=After Call Work)の3つです。概要と評価の目安は下表のとおりですが、効率と品質は両立しにくいため、見比べる視点が欠かせません。
指標 | 概要 | 目安 | ||
|---|---|---|---|---|
AHT | 総通話時間、総保留時間、総後処理時間を足し、総対応件数で割った1件当たりの対応時間 | 品質を保ちつつ短いほど良い | ||
稼働率 | ログイン時間(応対可能時間)にオペレーター業務に割いた時間の割合 | 高すぎる負荷を避け適正に保つ | ||
ACW | 通話後の入力や記録といった後処理にかかる平均時間 | 短いほど良い | ||
処理品質:ミス率・エスカレーション率・再入電率
処理品質は、対応の正確さや完結度を表すKPIです。向上させるには、オペレーターがすぐに参照できるナレッジベースの整備と、対応フローの標準化が欠かせません。
代表的な指標としては、ミス率・エスカレーション率・再入電率の3点があります。いずれも対応のやり直しや顧客の手間に直結するため、低く保つほど全体の信頼につながります。
指標 | 概要 | 目安 | ||
|---|---|---|---|---|
ミス率 | 対応内容に誤りが生じた割合 | 低いほど良い | ||
エスカレーション率 | 上位者へ対応を引き継いだ割合 | 適正な範囲に保つ | ||
再入電率 | 同じ用件で再び入電した割合 | 低いほど良い | ||
コールセンターのおもな分析手法
ここでは、コールセンターでよく用いられる代表的な分析手法を紹介します。目的に合った手法を選ぶことで、蓄積したデータから必要な気付きを引き出しやすくなるでしょう。
データ分析のおすすめツールについては、「コールセンターのデータ分析方法とは?手法からおすすめのツールをご紹介」の記事で詳しく紹介していますので、あわせて読んでみてください。
KPI分析
KPI分析は、応答率やAHT、放棄呼率といった指標を定期的に測定して可視化し、定量的に評価する方法です。数値の推移を追うことで、運営全体の「健康状態」を客観的に把握できます。
どこにムダや負荷が生じているのかが可視化されるため、業務の効率化やコスト削減、オペレーターのシフト最適化につなげられます。まずは現状を数値でとらえる土台として、多くのコールセンターで取り入れられている手法です。
VoC分析
顧客の声(VoC=Voice of Customer)分析は、問い合わせやアンケートを通じて寄せられる顧客の声を収集し、内容ごとに分類する方法です。個別の意見もまとめて整理することによって、多くの顧客に共通する不満や、まだ表面化していない潜在的なニーズを早い段階で抽出できます。
そこで得た気付きは、商品やサービスの改良、FAQの強化など、具体的な改善施策の根拠として活かせます。現場の感覚に頼らず、声の傾向を根拠として示せる点が強みです。
トーク分析
トーク分析は、音声認識や生成AIを活用して通話記録をテキスト化し、頻出する言葉や顧客の感情を解析する方法です。どのような場面で顧客が不満を感じているのかといった課題を可視化できます。
さらに、評価の高い対応の特徴を抽出して共有すれば、オペレーターごとの対応を標準化できるため、応対品質のばらつきを防げます。新人とベテランの差を縮める教材としても使えるため、応対の質を組織として底上げできます。
クロス集計
クロス集計は、顧客の年齢や性別といった属性と、コールの理由などの複数のデータをかけ合わせて分析する方法です。単一の項目を集計するだけでは見えてこないような、利用傾向の詳細や、課題が生まれる因果関係がわかります。
例えば、特定の年代に多い問い合わせや、ある商品に集中する不満などが浮かび上がります。属性ごとの違いが見えると、施策の対象や優先順位もつけやすくなるでしょう。
コールセンターの従来型分析手法が抱える3つの限界
従来のコールセンターの品質管理は、人の手に大きく依存した構造でした。そのため、評価の網羅性・客観性・継続性の面で限界があります。
ここでは、従来型の分析手法が抱える3つの限界を解説します。
1.全通話の数%しか評価できないサンプリングに問題がある
現場の責任者であるスーパーバイザー(SV)が手作業で通話録音を抜き出してモニタリングする従来の手法では、評価できるのは全通話のわずか1~3%程度にとどまります。大半の通話は確認されないまま埋もれてしまうため、現場で何が起きているのかを正確につかむのは困難です。
さらに、評価する人の主観や経験値によってスコアにばらつきが生じやすく、同じ通話でも評価者が変われば結果が変わってしまうことがあります。これでは客観性を担保できているとはいえません。サンプリングに頼った評価には、網羅性と公平性の両面で構造的な課題があります。
2.SVの工数逼迫で育成・改善があと回しになる
SVは、品質管理だけでなく、シフト管理やクレーム対応など多岐にわたる業務を並行して担っています。そのため、本来の役割であるオペレーターの育成に割ける時間が、どうしても不足しがちです。
手作業であるモニタリングに時間を取られるほど、オペレーターのスキルを高めるサイクルは滞っていきます。育成があと回しになると、新人オペレーターが戦力になるまでの時間が延び、一人当たりの応対品質もなかなか上がりません。結果として、現場全体の底上げが進まないという悪循環につながるでしょう。
3.人手不足が分析精度を下げる悪循環に陥る恐れがある
コールセンター業が含まれるサービス業の離職率は約2割と高く、多くの現場で慢性的な人員不足に陥っています。人手が足りないほど一人当たりの対応件数は増え、SVも現場の対応に引っ張られて、モニタリングや分析に充てられる時間がさらに削られます。
人的リソースに依存した分析体制のままでは、人手不足が続く限り、分析の精度を高めることも見込めません。課題の可視化とその対策の両方に手が回らなくなり、改善サイクルが止まってしまう恐れがあります。このような悪循環を断ち切るには、人手に頼らない仕組みづくりが求められます。
コールセンターのAI分析で解決できる業務
前節で述べた従来手法の限界は、AIを活用した分析基盤の導入により、構造的に解決可能です。ここでは、コールセンターのAI分析によって解決できる業務について具体的に解説します。
音声認識による全通話の自動テキスト化と感情分析
AIの音声認識を使えば、すべての通話内容をリアルタイムでテキスト化できます。これにより、従来のサンプリング評価では把握しきれなかった全件の通話データが分析の対象になります。
さらに、声のトーンや抑揚、話す速さといった、言葉にならない情報までAIによって分析可能です。感情分析により、顧客の怒りや不満といった感情の変化を、数値として可視化します。これまでオペレーターが手作業で行っていた後処理の工数を減らせるうえ、顧客の潜在的な不満を見落とすリスクも抑えられるため、対応の質を保ちながら業務を効率化できます
VoCの自動カテゴライズと傾向把握
テキスト化された通話データを、AIが自動でカテゴリごとに振り分けます。そのため、どのような問い合わせが何件あったのかを、人手を介さずにリアルタイムで把握できます。キーワードの抽出やテキストマイニングによって、顧客が頻繁に使う言葉や、不満が生じるパターンを定量的に分析することも可能です。
こうして蓄積されたVoCのデータは、商品・サービスの改善やFAQの整備、マーケティング戦略を考える材料として他部門とも共有できます。これにより、コールセンターを組織全体の財産に変えられます。
VoCについては「VOC(Voice of Customer)とは?顧客の声をビジネスに活用する方法を解説」の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
AIによる通話・応対品質の自動スコアリング
AIは、トークスクリプトの遵守率やNGワードの検出、話す速さ、発話量の比率といった評価項目を、通話ごとに自動で採点します。そのため、全通話を統一基準で客観的に評価可能です。
これまでSVの主観や経験値に頼っていた評価が統一された基準によって定量化されることにより、オペレーター間で生じていた評価のばらつきが解消されます。誰が見ても納得できる、公平なフィードバックの体制を構築できます。評価する側の負担を減らしながら、評価結果を育成にそのまま活かせる点も大きな利点です。
リアルタイムモニタリングと即時フィードバック
通話の最中にAIが感情の変化やNGワードを検知すると、SVへ即座にアラートを通知します。この仕組みを使えば、クレームの深刻化を早い段階で防げます。SVは、全オペレーターの通話状況をダッシュボードによりリアルタイムに把握できるため、問題が起きている通話にだけ即座に介入するといった効率的なマネジメントが可能です。
さらに、通話の直後に自動生成されたモニタリングスコアとフィードバックをオペレーター自身が確認できる仕組みもあり、対応しながら学べる環境が応対品質の底上げにつながります。
コールセンターのAI分析ツールを選ぶポイント
AI分析ツールは、導入して終わりではありません。選定の段階で次の5つのポイントを確認しておくことが、導入後の効果を最大化するうえで不可欠です。
自社課題との適合性
ツールを選ぶ前に、まず導入の目的をはっきりさせることが大切です。後処理時間の削減なのか、品質評価の客観化なのか、それともVoCの活用なのか。何を実現したいのかを、関係者の間で言語化しておきましょう。目的があいまいなままだと、いくら機能が充実したツールを入れても効果を正しく測定できず、現場への定着も難しくなります。
導入するツールの判断に迷うときは、実際に自社で録音したデータを使って各ベンダーに精度の検証を依頼するのが、最も確実な確認方法です。目的が定まっていれば、機能の取捨選択の判断もぶれません。
既存システム(CTI・CRM)との連携性
AI分析ツールが既存の電話回線とパソコンをつなぐシステム(CTI=Computer Telephony Integration)や顧客管理システム(CRM=Customer Relationship Management)と連携できないと、通話データと顧客情報が分断されたままで運用することになります。これでは、せっかくのデータを十分に活かせません。CTIとAI分析ツールが連携していれば、着信時の顧客情報の表示から、通話の自動録音、テキスト化、CRMへの自動登録まで、一連のフローとして自動化可能です。
将来のシステム拡張も見据えて、連携できる外部ツールの種類が多いかどうかも確認しましょう。ツールがつながるほど、分析の精度も運用の効率も高まります。
導入・運用コストの妥当性
コストは、初期費用や月額費用だけで判断しないことが重要です。席数が増えたときの追加費用やオプション機能の料金、カスタマイズにかかる費用まで含めた、トータルコストで比較しましょう。
併せて、コスト削減の効果も試算しておきます。AIによる自動処理によりどれだけの人件費や研修費、後処理の工数を減らせるのかを、導入前に算出しておくことが大切です。
学習データの整備しやすさ
AIは、導入したその日から高い精度で稼働するわけではありません。自社の業界用語や製品名、固有名詞などをあらかじめ辞書に登録して学習させる、初期設定の工数が必要です。利用するほど認識の精度が高まる自動学習機能を持つツールを選べば、運用を始めたあとの精度改善にかかる人的な工数を、最小限に抑えられます。
特定の方言や業界特有の言い回しに対応できるかどうかも精度に直結するため、導入前には自社の通話環境に近い条件での検証を実施しておきましょう。現場に適合するほど、定着までの時間を短縮できます。
サポート体制と導入後の改善支援
ツールは、導入しただけでは成果につながりません。テキスト化したデータを、どう分析し、その結果をどう活用していくのかまでアドバイスしてくれるベンダーを選ぶことが大切です。導入後も継続的にKPIを測定し、ベンダーと定期的に改善施策をレビューする体制が整っているかどうかは、ツールがきちんと定着するかどうかを左右する、重要な評価軸になります。導入はゴールではなく改善施策のスタートだととらえ、長く伴走してくれる相手を選ぶことをおすすめします。
コールセンター分析をAI活用で上手に機能させよう
この記事では、業務の分析が必要な理由から、4つのカテゴリの主要KPI、代表的な分析手法、従来手法が抱える限界、AI分析で解決できる業務やツールの選び方まで解説しました。
コールセンターには、業務改善のヒントになるデータが日々蓄積されています。人手に頼った従来の品質管理には限界がありますが、AIを活用すれば全通話を客観的に評価し、改善のサイクルを回し続けられます。自社の課題に合った手法とツールを選び、ぜひ成果につなげましょう。







