従業員の声をグループ経営の判断材料に ― 組織サーベイを、経営の共通言語に変えるAI活用 ―


数値だけでは見えない課題を見抜き、特定。曖昧な推測を排除し、データに基づく組織開発へ。
数値の裏にある「理由」が見えず、現場へのフィードバックが形骸化
インフロニア・ホールディングスは、前田建設、前田道路、前田製作所、日本風力開発、三井住友建設をグループにもつ総合インフラサービス企業です。
グループ全体の経営改善と組織力強化を目的に、人事部門で定期的にエンゲージメント調査を実施していましたが、結果の活用に課題を抱えていました。NPSなどのスコアや設問別の数値は確認できるものの、「なぜその評価になっているのか」「どの組織に、どのテーマを優先すべきか」といった背景や要因を、経営や事業会社に十分に説明できない状態が続いていました。
特に大きな壁となっていたのが、自由記述コメントの扱いです。会社・職種・年代ごとに文脈の異なるコメントが大量に集まり、人手で読み込むには限界がありました。
結果として、「気になる声はあるが、全体として何が重要なのかが整理できない」という状況に陥っていました。グループ経営の判断材料として使うには、組織ごとの声を構造的に整理し、比較できる形にする仕組みが求められていました。そこで、自由記述をグループ会社ごとに意味単位で構造化し、分類・タグ化したうえで定量データと掛け合わせて分析できる「AI Central Voice」を導入しました。
組織ごとの「価値観の差」をデータで可視化し、納得感のある施策へ
「AI Central Voice」を用いてNPSスコアと回答理由として記述された自由記述コメントを掛け合わせ分析。スコアの背景にある感情とニーズを読み解き、課題の背景を構造的に把握しました。
まず、年代を問わず「推奨者」に区分される回答者のコメントを分析したところ、グループ全体で最も多く挙がったのは「職場の雰囲気」「労働環境」といった「働きやすい環境」に関する声でした。これにより、「職場の雰囲気」「労働環境」がグループ共通の最優先課題であることがデータとして裏付けられました。(図表の赤枠項目)
一方で、会社や年代、職種による違いも浮き彫りになりました。
たとえば会社別の結果を比較してみると、A事業会社では「チャレンジ・イノベーション」への意欲に関する言及が多かったのに対し、B事業会社とC事業会社では「福利厚生制度」を重視する声が多く見られ、組織ごとに注力すべきポイントが異なることが明らかになりました。(図表のA事業会社の青枠項目、およびB事業会社とC事業会社の黄色枠項目)
こうした違いをデータで可視化したことで、画一的ではなく、各組織の実態に即した施策検討が可能となりました。

NPSスコアと自由記述の掛け合わせ分析により、3社の共通点と各社特有の傾向を特定
また年代別の分析では、以下のような結果と示唆が得られました。
B事業会社では、推奨者(エンゲージメントが高い層)のうち、若手層は「個人の業務負荷」に関心がある一方、ベテラン層は「会社の将来性」に関心を寄せていることがわかりました。
さらに、同じくB事業会社の課題を感じている層(批判者)を見ると、若手は「ワークライフバランス」、ベテラン層は「業界動向」を懸念していることが判明しました。誰が何を求めているかが明確になったことで、ターゲットを絞った施策立案の土台が整いました。
上記に加えて、選択式設問と自由記述の相関分析により、課題の真因を掘り下げることができました。
たとえば、「休日・休暇」の満足度が低い層は、NPSの理由として「業務過多」を挙げる相関が強く見られました。逆に満足度が高い層は「福利厚生の充実」を理由に挙げています。
「どの要素を改善すれば、誰の満足度が上がるか」という因果関係が明確になったことで、優先順位をつけた施策実行への道筋が描けるようになりました。

選択式設問の回答と自由記述コメントの相関を分析し、満足度に影響を与える要因を可視化
成功モデルを確立し、グループシナジーの創出へ
今回の分析結果をもとに、まずは複数の「モデル職場」を選定し、実験的に施策を実行していく予定です。現場の理解を得ながら成功事例をつくり、グループ全体への横展開を図ります。
次年度のサーベイでは、「グループ連携のあり方」も分析テーマに加え、「AI Central Voice」を活用して組織開発とグループ経営のさらなる深化を目指します。



