基礎知識
定性データ分析とは?おもな手法や進め方、AI活用のポイントを解説

アンケートの自由記述やコールログ、Web上のレビュー、SNSの口コミなど、数値化しにくいデータを分析する「定性データ分析」に取り組む企業が増えています。こうした顧客の声を丁寧に読み解いていくと、顧客の本音や不満が生まれた背景が見え、商品の改善や顧客対応の見直しへとつなげられるでしょう。
この記事では、定性データ分析の基本から、定量データ分析との違い、代表的な分析手法、実際のやり方、そしてAIを活用する際のポイントまでを順に解説します。はじめて取り組む方でも流れをつかめるよう順を追って説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
定性データ分析とは
まずは、定性データ分析の意味や定量データ分析との違い、マーケティングや商品改善の場面で注目される理由といった基本を解説します。基礎知識を押さえておくと、このあとで解説する分析手法やAI活用のポイントの話も理解しやすくなるはずです。
定性データとは
定性データとは、言葉や文章、行動、感情といった形で表され、数値化できないデータを指します。具体的には、インタビューでの発言やアンケートの自由記述、コールセンターの通話内容の記録、Web上の口コミ、SNSへの投稿などです。
これらは、そのままでは件数や割合のような数値で捉えにくい情報ですが、どれも貴重なデータです。顧客が抱いている本音や不満、行動に至った背景など、数値だけでは見えにくい情報をつかむうえで重要となります。
ただし、「読み手によって解釈が変わる余地がある」という側面があることに注意が必要です。
定性データと定量データの違い
定量データは、数値や割合、件数といった数値化できる情報です。
定性データ分析は、「なぜそう感じたのか」「どのような不満があるのか」といった理由や背景をつかみやすいのに対し、定量データ分析は「どれくらい発生しているのか」という規模をつかみやすいという違いがあります。
両者は得意とする領域が異なるため、2つを組み合わせると、なぜ起きているのかという背景と、課題がどれほど大きいのかという量の面を併せて分析できるようになります。どちらか一方だけでは課題の全体像を捉えにくいため、両者をバランスよく取り入れることが重要です。
定性データ分析でわかること
定性データを分析すると、顧客が商品やサービスに対して抱いている要望や不満、期待、失望などを読み取ることが可能です。また、「どの操作でつまずいているのか」「なぜ不満を感じているのか」なども見えてきます。
数値の増減だけを追っていてもわからない「理由」の部分に迫れる点が、定性データならではの強みだといえるでしょう。こうして得た気付きは、商品の改善や顧客対応の見直し、FAQやマニュアルの整備といった具体的な取り組みへと活かせます。
定性データ分析が重要な理由
ここでは、定性データ分析が企業の課題発見や改善活動にどう役立つのかを、3つの観点から解説します。
顧客の本音や不満の背景を把握できる
定性データ分析では、顧客が商品やサービスに対して本当のところどう感じているのかを把握できます。表に出てきた意見だけを見ていては気付きにくい不満や要望も、その背景まで読み取ることで、隠れていた課題として浮かび上がってきます。
例えば、同じ「使いにくい」というクレームでも、操作の複雑さが原因なのか説明不足が原因なのかで、打つべき手は変わってくるはずです。声の一つひとつに耳を傾けるほど、顧客が置かれている状況を具体的に思い描けるようになるでしょう。
顧客の声を丁寧にたどっていく作業は、顧客そのものへの理解を深め、より的確な対応や改善へと結びついていきます。
数値データだけではわからない原因を見つけられる
定量データを見れば、売上の落ち込みや問い合わせの増加といった変化には気付けますが、その原因まではつかみにくいものです。定性データを分析すると、顧客が不満に感じている原因を読み取れます。
原因が見えないまま対策を打っても、効果にはなかなか結びつきません。数値データと定性データを重ね合わせることで、課題の大きさとその原因を特定し、対策を講じることが大切です。
商品改善や顧客対応の品質向上につなげられる
定性データ分析によって明らかになった顧客のニーズや不満は、商品やサービスそのものの改善に活かせます。
例えば、コールセンターであれば、問い合わせ内容や通話ログを分析することで、FAQやマニュアル、対応フローの改善点が見えてきます。実際の声に基づいて分析できるため、担当者の主観に偏らず、顧客目線で施策を立案できるでしょう。
改善後の顧客の反応も分析すれば、施策のブラッシュアップや軌道修正もしやすくなります。こうして顧客の不満や要望を継続してつかめれば、顧客対応の品質を一段ずつ高めていけるはずです。
定性データ分析に使われるおもな調査・収集手法
定性データを集める方法はさまざまです。ここでは、代表的な調査・収集手法を紹介します。目的や予算に応じて、いくつかの手法を組み合わせてもよいでしょう。
ユーザーインタビュー・デプスインタビュー
ユーザーインタビューは、顧客に直接話を聞き、意見や行動の背景を探る方法です。一方、デプスインタビューは、1対1でじっくりと質問を重ね、本人でも言葉にしきれていない本音まで掘り下げていく手法です。いずれも回答の奥にある動機や感情にまで迫れるため、アンケートだけでは見えてこない発見につながるでしょう。
商品を購入した理由や、サービスを使ううえでの悩みなどを深く知りたい場面で役立ちます。
グループインタビュー
グループインタビューは、複数の参加者に集まってもらい、意見を出し合ってもらう調査手法です。参加者同士の会話のなかから、思いがけない意見や共通する不満、立場の違いによる多様な視点をつかめます。
他者の発言が呼び水となり、個別インタビューでは出てこなかった本音が引き出される点も見逃せません。一方で、周囲の発言に引きずられてしまう場合もあるため、発言の背景まで丁寧に読み取る姿勢が求められます
自由回答式アンケート・Webアンケート
自由記述欄のあるアンケートを使うと、選択式アンケートだけでは拾いきれない顧客の意見や不満を集められます。
Webアンケート形式で実施すれば、多くのユーザーから自由記述の定性データを効率良く収集できるでしょう。満足した理由や改善してほしい点などを分析していくうちに、顧客が何を求めているのかつかみやすくなります。
自由記述式アンケートの分析・要約方法については、「生成AIで自由記述式アンケートの自動分析・意見要約を実現する方法とは?」で詳しく解説しています。
SNSや口コミなど消費者の声の分析
SNSやWeb上の口コミには、企業に直接届きにくい、顧客の率直な声が数多く含まれています。マーケティングに利用されるという意識が薄いため、本音が出やすいのが特徴です。BtoC商材であれば、多くの顧客の声を収集しやすい利点もあります。
SNSや口コミの内容を分析すると、商品やサービスへの評価や不満、期待、使ってみたあとの感想、ブランドに対するイメージなどを読み取れるでしょう。これらをもとに、改善点を探せます。
UIレビュー・ユーザビリティテスト
UIレビューでは、Webサイトやアプリの画面を一つずつ確認し、使いにくい箇所を洗い出していきます。一方のユーザビリティテストでは、実際のユーザーに操作してもらい、迷いやすい部分や離脱してしまう原因を確かめます。
画面の設計や導線に潜む課題をつかめれば、使い勝手そのものの改善へつなげられるでしょう。
行動観察・ヒートマップ調査
行動観察では、ユーザーが実際にどのように動くのかを観察し、言葉では表れにくい課題を見つけ出します。実店舗での観察のほか、アプリやWebサイトの操作履歴などを用いて行われています。
また、ヒートマップ調査を使えば、Webページのどこまでスクロールされ、どこがクリックされているのかを、サーモグラフィーのように視覚化することが可能です。ユーザー行動を見れば、「使いやすい」と答えた人が、実際には途中で操作に迷っていたといったズレに気付きやすくなります。
発言の内容だけでなく、こうした行動データも併せて確認すれば、より実態に近い課題を把握しやすくなります。
定性データ分析の進め方

ここからは、定性データ分析の進め方について、「目的の設定 → データ収集 → データの整理・分類 → 課題の抽出 → 施策の実行・効果測定」という5つのステップに分けて解説します。順を追って進めれば、分析の抜け漏れも防ぎやすくなります。
分析の目的を明確にする
はじめに決めておきたいのは、定性データ分析によって何を達成したいかです。顧客満足度の向上、問い合わせの削減、商品の改善など、目的に応じて見るべきデータは変わってきます。
目的が曖昧なまま分析を始めてしまうと、せっかく得た結果を施策に活かしにくくなるでしょう。何を知りたいのかが定まれば、集めるべきデータの種類や量も自然と絞り込めます。遠回りを避けるためにも、最初に狙いをはっきりさせておくことが肝心です。
分析対象となるデータを集める
目的が定まったら、それに合わせてインタビューの記録やアンケートの回答、問い合わせの記録、通話ログなどを集めていきます。チャットの履歴や口コミ、SNSへの投稿なども、定性データとして収集できるでしょう。
1つのチャネルに頼ると顧客の声が偏る可能性があるため、必要に応じて複数のチャネルから集めておくと安心です。性質の異なるデータを組み合わせれば、顧客が抱える課題やニーズを多角的に捉えやすくなります。
また、目的に対してデータ量が不足している場合は、収集期間を延ばしたり収集先を追加したりして補います。
データを整理・分類する
集めたデータは、そのままでは分析しづらいため、不要な情報や重複を取り除いて整えていきます。表記のゆれや話し言葉を整理し、内容ごとに分類してコードを付けていくことで、全体の傾向が見えやすくなるでしょう。
例えば「価格への不満」「操作方法の疑問」「対応品質への評価」といったように、意味の近い意見をまとめておくのがおすすめです。分類の軸をあらかじめ決めておけば、担当者が複数いても判断がぶれにくくなるでしょう。ここで丁寧に整理・分類をしておくと、次の課題抽出がスムーズに進みます。
分析結果から課題を抽出する
分類したデータを見渡しながら、繰り返し現れる不満や要望、改善すべきポイントを探していきます。このとき、目立つ一部の強い意見だけで判断せず、複数のデータに共通して現れる傾向を読み取ることが必要です。声の大きさと数の多さは必ずしも一致しないため、全体を俯瞰する視点が欠かせません。
ときには少数の意見にこそ、改善の糸口が潜んでいます。顧客がどこで困っているのか、どの課題から優先して取り組むべきかを整理しておけば、その後の施策づくりもぶれずに進みます。
改善策を実行し効果を確認する
抽出した課題をもとに、商品の改善やFAQの整備、対応マニュアルの見直しといった施策を実行しましょう。施策を打ったあとは、問い合わせの内容や顧客の反応にどのような変化が現れたのかを確かめます。
こうした分析を一度きりで終わらせず継続していけば、改善活動そのものの精度を高めていけるはずです。
定性データ分析にはAIの活用も有効
自由記述や問い合わせ内容、通話内容の記録といった定性データは量が膨大になりやすく、手作業で分類しようとすると、多くの時間がかかります。そこで活用したいのがAIです。
AIを活用することで、顧客の声を自動で分類してコードを付け、繰り返し現れる意見や不満の傾向を効率良く整理できます。
分析結果をレポートやダッシュボードの形で共有できれば、商品の改善や顧客対応の品質向上へと、より活かしやすくなります。加えて、特定の担当者の感覚に頼らず一定の基準で分類できるため、分析結果のばらつきを抑えられる点もメリットです。
このように、これまで人が担ってきた確認や分類の作業をAIに任せることで、担当者は課題の見極めや施策づくりに時間を割けるようになります。課題の見極めや施策づくりまでAIに任せたい方もいるでしょうが、これらには業務への理解や状況に応じた判断が求められるため、定型作業はAI、判断は人という役割分担が現実的です。
AIを活用したVoC分析の具体的な方法やメリットについては、「VoC分析とは?収集方法からAIを活用した分析・成功事例まで解説」で詳しく解説しています。
定性データ分析で顧客の声を事業改善に活かそう
定性データ分析は、数値だけでは見えてこない顧客の意見や感情、不満が生まれた背景をつかむうえで役立ちます。インタビューやアンケート、問い合わせの記録、口コミなど、さまざまな顧客の声を分析の対象にできる点も特徴です。
こうしたデータを継続して分析し、商品の改善や顧客対応の品質向上へと結びつけていけば、事業を前へ進める力になるでしょう。一度きりの調査で終わらせず、継続的に実施できる仕組みを整えられるかどうかが重要です。
分析にかかる手間を抑えながら顧客の声を活かす環境を構築したい場合は、AI Central Voiceの活用を検討してみてください。





