AI活用
コールセンターのカスハラ対応をAIで支援|事例・対策・導入手順を解説

コールセンターでは、暴言や長時間の拘束、過剰な要求などを行う「カスハラ」が、近年深刻な問題になっています。対応を現場のオペレーター任せにしていると、負担が増すばかりか、対応品質の低下や離職を招きかねません。
本記事では、カスハラ対策義務化の流れにも触れながら、コールセンターで起こりやすい事例、組織として行うべき対応策、AIの活用方法と導入手順を解説します。
カスハラ対策義務化でコールセンターの現場も変わる
株式会社リンクの調査によると、電話対応窓口で働く人のうち、7割以上がカスハラを経験していることが判明しました。これほど日常的に起きている問題でありながら、対応は個々のオペレーターの我慢や経験に委ねられてきたのが実情です。
こうした状況を受け、2025年6月に法律が成立し、2026年10月1日から義務化されます。今後は組織的に対応できる体制を整えることが企業に求められ、コールセンターも例外ではありません。誰が電話を取っても同じ基準で対応でき、被害が起きたときに対応できるような仕組みを持たない現場は、法律面でも人材確保の面でも立ち行かなくなります。
義務だから対応するというより、オペレーターが安心して働ける環境を作らなければ現場が持たない段階に来ている、ととらえるべきでしょう。なぜ今コールセンターにカスハラ対策が必要なのか、その理由を順に見ていきます。
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000144.000007832.html
コールセンターにおけるカスハラの現状
コールセンターは、顧客の不満や怒りを最初に、そして直接受け止める窓口になりやすい場所です。商品への不満や手続きへのいら立ち、企業への不信感といった感情のはけ口が、電話の向こうにいるオペレーター個人へ向かいます。
さらに、電話対応には相手の表情が見えないという特性があります。顔が見えない電話では暴言や威圧的な言動に歯止めが利きにくく、エスカレートしやすくなります。
理不尽な要求や人格否定に近い言動を浴び続ければ、オペレーターのストレスは着実に積み重なっていきます。本人が平気なふりをしていても、ある日突然出勤できなくなるケースは珍しくありません。
カスハラは一部の特殊なクレーマーの問題ではなく、コールセンターという業務が抱えるリスクとしてとらえる必要があります。だからこそ、個人の耐性に頼るのではなく、組織として向き合う体制が必要です。
コールセンターで起こりやすいカスハラの事例
一口にカスハラといっても、その内容はさまざまです。ここでは、コールセンターで発生しやすい代表的な4つの事例を紹介します。自社の現場で起きていないか、照らし合わせながら確認してください。
暴言や威圧的な言動
最も典型的なカスハラが、怒鳴る、侮辱する、人格を否定する、脅すような言葉を使うといった言動です。
大声で罵倒されたり、「おまえでは話にならない」と繰り返されたりすれば、オペレーターは恐怖して萎縮し、冷静な対応を続けられなくなります。判断力が落ちた状態で対応を続ければ、ミスを誘発してさらに事態がこじれる悪循環にも陥りかねません。
暴言が続く場合は、オペレーター一人に抱え込ませないことが重要です。通話内容を記録したうえで、上長や管理者へ引き継ぐ流れをあらかじめ決めておく必要があります。
長時間の通話による拘束
同じ主張を何度も繰り返す、説明しても納得せず電話を切らない、長時間にわたって業務を妨げるといった拘束型のカスハラも、コールセンターでは頻繁に起こります。
1件の対応が1時間、2時間と長引けば、その間にほかの問い合わせは滞り、待ち時間が増加して別の顧客にまで影響がおよびます。対応しているオペレーターの疲弊も相当なものです。
だからこそ、一定時間を超えた場合に上長へ引き継ぐ基準や、対応を終了するルールをあらかじめ決めておかなければなりません。終わりの基準がないままでは、オペレーターは電話を切る判断ができず、延々と付き合わされることになります。
過剰な補償や特別対応の要求
規定を超える返金、特別な値引き、過度な謝罪、担当者の処分などを求めるのは、要求内容が妥当性を欠くタイプのカスハラです。
厄介なのは、現場の担当者がその場の勢いに押されて判断してしまうと、対応にばらつきが生まれ、「あのときは応じたのになぜ今回は駄目なのか」と、さらなる要求を招く点にあります。
前例を作ってしまえば、要求は繰り返されるでしょう。対応できる範囲を事前に明確にしておき、範囲を超える要求については上長や関係部署と連携し、組織として判断する体制を整えておくことが必要です。
個人攻撃やSNS投稿を示唆した圧力
オペレーター個人を執拗に責める、フルネームを名乗るよう迫る、「SNSに書き込んで拡散する」と圧力をかけるなども、見過ごせないカスハラです。個人への攻撃は精神的な負担が大きいだけでなく、実際に外部へ発信されれば、事実と異なる内容が広まって企業の信用を損なうことにもつながります。
つまりカスハラは、オペレーター個人の問題では済まないということなのです。発言内容や対応履歴を正確に記録し、事態の深刻度に応じて管理者、広報、法務といった部署と連携できる体制を整えておくことで、脅しに屈しない対応が可能になります。
コールセンターで行うべきカスハラ対応

事例を踏まえたうえで、次はコールセンターとして実際に何を整えればよいのかを見ていきます。ここで紹介する4つの取り組みは、いずれも組織としての備えです。
カスハラに該当する基準を明確にする
対策の出発点は、何がカスハラにあたるのかを社内で定義することです。暴言、威圧的な発言、長時間の拘束、過剰な要求など、該当する言動をできるだけ具体的に書き出します。
併せて、正当なクレームとカスハラの違いも整理しましょう。基準が曖昧なままでは、オペレーターは目の前の相手がクレーム客なのかカスハラなのか判断できず、対応に迷い続けることになります。社内基準を全員で共有しておけば、人によって対応が変わることも防ぎやすくなるでしょう。
対応マニュアルとエスカレーション体制を整える
基準を決めたら、次は動き方をマニュアルに落とし込みます。一次対応の流れ、注意喚起に使う文言、上長へ引き継ぐ条件、対応を終了する基準までを具体化して初めて、現場で使えるマニュアルになります。
併せて、暴言や長時間拘束が続く場合に、スーパーバイザーや管理者が早い段階で介入できるような体制も整えましょう。介入が遅れるほど、オペレーターの消耗は大きくなります。現場担当者だけの判断に委ねず、組織として一貫した対応ができる状態を作ることが大切です。
通話内容や対応履歴を記録する
カスハラ対応において、記録は守りの要になります。残しておくべき項目は次のとおりです。
・顧客の発言内容
・対応にかかった時間
・オペレーターが案内した内容
・注意喚起を行ったかどうか
・上長などへの引き継ぎ状況
これらの記録は、再発防止や対応方針の見直しに使えるだけでなく、法務や管理部門と連携する際の判断材料にもなります。
また、担当者が変わっても経緯をすぐに把握できるため、同じ説明を顧客に繰り返させることもありません。記録を残す仕組みそのものが、オペレーターを守る盾として機能します。
オペレーターのメンタルケアを行う
体制を整えても、カスハラの被害を完全になくすことはできません。だからこそ、カスハラを受けたあとのケアが必要です。カスハラを受けたオペレーターには、上長による声かけやフォロー、担当の交代、休憩時間の確保といった対応をすぐに行いましょう。
加えて、相談窓口や定期的な面談の機会を設け、精神的な負担を一人で抱え込ませない環境も整えましょう。対応後の振り返りで気を付けたいのは、個人を責めないことです。「なぜ電話を切れなかったのか」と問い詰めるのではなく、マニュアルや組織体制のどこに改善の余地があったのかへ目を向けることで、現場は安心して報告できるようになります。
コールセンターのカスハラ対応にはAI活用も有効
体制やマニュアルの整備と並行して、AIの力を借りる方法もあります。人手に限りがあるなかでオペレーターの負担を減らす手段として、代表的な3つの活用法を紹介します。
AIによる一次対応で定型問い合わせを減らす
FAQで解決できる質問や手続きの案内といった定型的な問い合わせは、AIチャットボットや音声AIによる一次対応に任せられます。オペレーターにつながる前にAIが応対を済ませることで、人が受ける入電の総量が減り、オペレーターは人の判断が求められるクレーム対応に集中しやすくなります。
顧客側にとっても、待ち時間が短くなり、どの担当者になっても案内の内容が変わらないという利点があります。対応品質の平準化と負担軽減を同時に進められる方法です。
自然言語処理でクレームの分類や感情分析を行う
自然言語処理を活用すると、顧客の発言内容から問い合わせの種類や意図を自動で分析できます。怒りや不満、焦りといった感情も検知できるため、カスハラに発展しそうな通話を早い段階で把握しやすくなります。
つまり、オペレーターが助けを求める前に、管理者側が異変に気付ける状態を作れるということです。検知したクレームの種類や深刻度は、管理者へ引き継ぐかどうかの判断材料としても使えます。勘や経験に頼っていたエスカレーションの判断を、データで支えられるようになるのがメリットです。
通話要約で記録作成と情報共有を効率化する
AIによる通話要約を使えば、対応履歴の作成にかかる時間を大きく減らせます。通話が終わるたびに手作業でメモをまとめる必要がなくなり、顧客の主張、オペレーターが案内した内容、未解決の事項を整理された形で残すことが可能です。
この要約は、上長へエスカレーションする場面や、後日あらためて対応する場面で特に役立ちます。必要な情報を素早く共有できるため、経緯の説明に時間を取られず、引き継ぎの漏れも防げます。記録の負担を減らしながら、記録の質を上げられる機能です。
コールセンターのカスハラ対応にAIを導入するための手順
実際にAIを導入する際は、いきなりツールを入れるのではなく、運用の設計から始めることが肝心です。現場で混乱なく機能させるための手順を3つに分けて整理します。
AI対応の範囲と有人対応への切り替え基準を決める
最初に決めるべきは、AIに任せる業務と人が判断すべき業務の線引きです。FAQ対応、問い合わせの分類、通話要約など、AIを活用しやすい業務を洗い出すところから始めます。
併せて、有人対応へ切り替える条件も具体的に定めておきましょう。例えば、暴言が続いている、補償の要求が繰り返されている、法的リスクをはらんでいるなどです。こうした条件をあらかじめ決めておかないと、AIから人への引き継ぎが現場ごとの判断になり、対応のばらつきが生じます。
AIの分析結果をもとにエスカレーションフローを整える
次に、AIがカスハラの可能性を検知した場合に、スーパーバイザーや管理者へ通知が届く流れを作りましょう。通知を受けた管理者は、通話内容の要約や感情分析の結果を確認したうえで、担当の交代、折り返し対応への切り替え、顧客への注意喚起、対応の終了といった選択肢から判断します。
ポイントは、AIの検知を組織の判断につなげる経路を明確にしておくことです。せっかくアラートが上がっても、誰が受けて誰が決めるのかが曖昧では、オペレーターが一人で対応を抱え込む状況が続いてしまいます。
個人情報やAIの誤判定に注意して運用する
通話データや問い合わせ内容には個人情報が含まれるため、保存する範囲、利用する目的、アクセスできる権限をあらかじめ明確にしておく必要があります。
特に運用時は、AIの判定を絶対視しないよう留意しましょう。分析結果はあくまで判断材料であり、すべてを自動判断に委ねるべきではありません。
誤判定や現場との認識のずれは必ず起こり得るものとして、AI導入後も判定基準や運用ルールを定期的に見直し、実態に合わせて調整を続けることが大切です。
まとめ:コールセンターのカスハラ対策にAIを活用しよう
コールセンターでは、暴言、長時間の拘束、過剰な要求といったカスハラがオペレーターの大きな負担になっています。
そこで、基準の明確化やマニュアル整備といった組織的な対応が重要になります。さらに、AIを活用することで、一次対応の自動化や感情分析による早期検知、通話要約による記録の効率化などが可能になり、オペレーターの負担を軽減できます。
組織全体のカスハラ対策強化とオペレーターを守る体制づくりは、もはや先送りできないコールセンターの課題です。カスハラ対応の改善に向けて通話データの活用を検討している方は、AI Central Voiceにお問い合わせください。







