コールセンターの膨大なデータ分析、何から手をつければ良いか悩んでいませんか?複雑なデータから業務改善のヒントを見つけ出すことに、多くの担当者が課題を感じていることでしょう。
この記事では、コールセンター業務におけるエクセル分析のメリットから、ゴールとすべき集計項目、日々の業務効率化に役立つ7つのエクセル関数を具体例とともに解説します。この記事を読めば、データ分析スキルがなくても、効率的にデータを整理・分析し、お客様対応の質と生産性向上に繋げられるでしょう。
AI Central Voiceへのお問い合わせ・資料請求はこちらから
コールセンターのデータをエクセルで分析するメリット
ここでは、コールセンターのデータをエクセルで分析するメリットを3つ紹介します。それぞれのメリットを理解し、自社でエクセルを使用するかを検討しましょう。
コストをかけずにデータ分析を始められる
多くの企業がすでにExcelを導入しているため、高価な分析ツールやシステムを新たに購入する必要がありません。追加のコストをかけることなく、すぐにデータ分析の第一歩を踏み出せるのが最大のメリットです。特別な専門知識がなくても、使い慣れた環境でコールセンターのデータを集計・分析できるため、予算が限られている企業や部署でも気軽に始められます。
まずはExcelで分析の基礎を固め、データ活用の文化を組織に根付かせることが可能です。
データの「見える化」で現状を正確に把握できる
エクセルのグラフやピボットテーブルを活用すれば、数字の羅列に過ぎなかったコールセンターデータが、誰にでも理解しやすいビジュアル情報に変わります。これにより、日々の通話量の変動パターンや、特定の時間帯にAHT(平均処理時間)が伸びる傾向、オペレーターごとのパフォーマンスの違いなどを視覚的に把握できます。
データを「見える化」することで、感覚に頼っていた現状を客観的に捉え、コールセンターが抱える課題を正確に特定できるようになります。
業務改善のヒントを素早く見つけられる
エクセルでデータを分析することで、単なる集計結果だけでなく、業務改善に直結する貴重なインサイト(洞察)を素早く発見できます。例えば、特定のキャンペーン期間と放棄呼率の相関関係、特定の問い合わせ内容と解決率の関連性などを分析できます。これらの分析結果は、「どの時間帯に人員を増やすべきか」「どの問い合わせに対するナレッジを強化すべきか」といった、具体的なアクションプランを立てるための根拠となります。
データを活用すれば、改善活動を効率的かつ効果的に進められます。
コールセンターのデータをエクセルで分析する方法
コールセンターのデータをエクセルで分析するには、以下の項目が重要です。それぞれの項目について理解し、エクセルを効果的に使えるようにしましょう。
データのばらつきについて
データ分析で最初にすべきことは、分析対象となるデータ全体の状況を把握することです。平均値のような代表値だけではデータ全体を正確に捉えることは難しく、特にデータが多い場合は、データの傾向を見誤る可能性があります。
データのばらつきや分布の傾向を把握するには、データの可視化が非常に有効です。データを一定の範囲で区切り、その範囲に含まれるデータの数を集計した「度数分布表」を作成し、それをグラフで表現した「ヒストグラム」を利用することで、データの分布状況が一目で理解できます。
データの平均について
普段私たちが使う「平均」は、統計学では「算術平均」と呼ばれます。コールセンターのデータ分析では、この平均の計算方法に注意が必要です。
例えば、オペレーターの対応件数の平均を出すには「オペレーター全員の総処理時間」を「オペレーター全員の対応件数」で割ります。オペレーターごとに対応件数が違うため、平均の平均を取るとわずかな誤差が出て、それが積み重なると稼働計画に影響することがあります。
また、「算術平均」のほかに「幾何平均」という種類もあります。幾何平均は、データが「比率」で表される場合に便利です。例えば、コールセンターへの入電数が年々何倍になったかという成長率のようなデータには、算術平均ではなく幾何平均を使うと、より実態に合った平均成長率を計算できます。
データの相関性について
相関分析は、2つのデータ間の関係の強さを数値で評価する手法で、コールセンターを含む多くの分野で活用されています。
エクセルで相関分析を行うには、以下の手順に従います。
- 分析したい2つのデータをシートに入力
- データの範囲を選択し、散布図を作成
- 散布図を選択した状態で、近似曲線を追加し、「グラフにR-2乗値を表示する」を選ぶと、相関係数であるR-2乗値が表示
- R-2乗値は0から1の範囲で表され、1に近いほど2つのデータの相関が強く、0に近いほど相関が弱いことを意味します。一般的に、0.5を目安として判断する
エクセルの「アイデア」機能を使うと、AIがデータを自動的に解析し、さまざまな相関分析の結果を円グラフや折れ線グラフなどの視覚的な形式で示してくれます。これにより、新たな視点からの分析結果が得られ、業務改善や新しい製品・サービスの開発につながるかもしれません。
相関分析は客観的なデータですが、数値だけでは捉えきれない側面もあります。そのため、スーパーバイザーによるモニタリングや、顧客を装ったミステリーコールといった定性的な分析と組み合わせることが重要です。
また、相関関係があっても、それが直接的な因果関係を示すとは限りません。課題の原因を探る際には、先入観に頼らず、数値の根拠を注意深く検証することが大切です。
今すぐ始めるAIによる顧客分析 ~分析方法から注意点まで解説
コールセンターの分析における主要な指標と項目
ここでは、コールセンター業務をエクセルで分析する際の集計項目を指標に合わせて紹介します。また、具体的な改善策に繋げるための活用術も紹介するので、参考にしてください。
業務効率性
コールセンターにおける業務効率指標は、業務プロセスを可視化し、無駄を特定・改善することを目的にしています。この指標を適切に計測・分析することで、コスト削減や生産性の向上に直接つなげることができます。
分析すべき主な項目は以下の通りです。
- 入電・架電数(コールボリューム):コールセンターに入ってくる電話(入電)と、こちらからかける電話(架電)の総数
- 応答率・放棄呼率: 応答できたコールの割合と、放棄されたコールの割合
- 平均処理時間(AHT): 顧客対応から後処理までの平均時間
これらの項目をExcelで集計・分析すれば、特定の時間帯にAHTが伸びていないか、あるいはサービスレベルが低下していないかといった課題を明確にできます。
顧客満足度
顧客満足度指標は、顧客が私たちのサービスにどれだけ満足しているかを測る羅針盤です。これらの指標を分析することで、顧客ロイヤルティを高め、企業のブランド価値向上に貢献できます。顧客満足度を上げるには、単に素早く対応するだけでなく、質の高いコミュニケーションやスムーズな問題解決が不可欠です。
分析すべき主な項目は以下の通りです。
- 顧客満足度(CSAT): 「今回の対応に満足しましたか?」といった質問への回答
- 推奨度(NPS): 「友人や同僚に勧めたいですか?」といった質問への回答
- 解決率(FCR): 初回の電話で解決したコールの割合
- 通話時間: 対応にかかった時間
- 問い合わせ内容分類: 顧客が問い合わせた内容の種類
- 顧客の属性: 性別、年齢、居住地域、購入履歴、会員ランクなどの情報
これらの項目と、オペレーター名、解決状況といったデータを紐づけることで、「なぜ満足度が上がった(下がった)のか」という根本原因を特定できます。
オペレーターの品質・生産性
オペレーターはコールセンターの顔であり、サービスの品質を左右する最も重要な要素です。これらの指標を分析することで、オペレーター個々の強みと改善点を把握し、公平な評価と効果的な育成プランを策定できます。また、オペレーターのパフォーマンスを正しく評価することは、モチベーション向上と離職率低下にも繋がります。
分析すべき主な項目は以下の通りです。
- 応対品質スコア: 通話モニタリングや第三者評価によるスコア
- 解決率(FCR): 初回の電話で解決したコールの割合
- 平均処理時間(AHT): 顧客対応から後処理までの平均時間
- 通話数: 1日あたりの対応件数
これらの項目を定期的に分析すれば、各オペレーターのパフォーマンスを客観的に評価し、個別に最適化されたフィードバックや研修を提供できるようになります。
コールセンター業務の分析で集計に役立つエクセル関数7選
コールセンターの効率化にはエクセルが不可欠です。ここでは、コールセンター業務をスムーズに進めるために必要な7つの便利なエクセル関数をご紹介します。これらの関数をマスターすることで、時間節約やデータの整理・分析に役立て、お客様対応の質と生産性を向上させることができます。
1.SUM関数
SUM関数は、指定したセル範囲にある数値をまとめて計算する関数です。例えば、日々の問い合わせ件数を合計して、月間の合計問い合わせ件数を算出する際に役立ちます。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=SUM(数値1,数値2,…) |
セル範囲を指定する際には、以下の数式を使います。
=SUM(A1:A10) |
2.IF関数(IFS)
IF関数は、指定された条件式が真か偽かによって、あらかじめ設定された値を返す関数です。この関数を使うと、条件に応じて2つの異なる結果を得られます。さらに、複数の条件を設定できるIFS関数を利用することで、数式内の括弧を減らし、計算式を簡潔に記述できます。
ただし、関数が複雑になりすぎると、後任者が理解するのに時間がかかる可能性があるため、COUNTIFやSUMIFのような、よりシンプルな関数を使用するのがおすすめです。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=IF(論理式,値が真の場合,値が偽の場合) 例:=IF(A1>100,”高”, “低”) |
複数条件の場合には、こちらを使用します。
=IFS(論理式1,値1,論理式2,値2,…) 例:=IFS(A1>200,”非常に高い”,A1>100,”高い”,TRUE,”低い”) |
3.AVERAGE関数
AVERAGE関数は、与えられた引数の平均値を計算する関数です。引数には、数値、数値を含む名前、配列、セル参照を指定できます。非常に便利な関数ですが、使い方を誤ると計算結果に大きな誤差が生じる可能性があるため、注意が必要です。
例えば、次の3日間の平均応答率を考えてみましょう。
- 1日目:10件の問い合わせに対し10件応答 (100%)
- 2日目:10件の問い合わせに対し10件応答 (100%)
- 3日目:50件の問い合わせに対し20件応答 (40%)
日ごとの応答率を単純にAVERAGE関数で平均すると80.0%になりますが、3日間全体の着信数(70件)に対する応答数(40件)で計算すると57.1%となり、大きな差が生じます。このように、「平均の平均」を計算する際は注意が必要です。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=AVERAGE(数値1,数値2,…) |
セル範囲を指定する場合には、以下の数式を使いましょう。
=AVERAGE(B1:B10) |
4.COUNTIF関数(COUNTIFS)
COUNTIF関数は、指定された範囲内で条件に合致するセルの個数を数える関数です。問い合わせチャネル、種類、対応結果といったカテゴリ別に件数を集計する際に便利です。また、複数の条件を設定できるCOUNTIFS関数を使うことで、さらに幅広い分析ができます。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=COUNTIF(範囲,検索条件) |
複数条件の場合には、以下の数式を使いましょう。
=COUNTIFS(範囲1,検索条件1,範囲2,検索条件2,…) |
5.SUMIF関数(SUMIFS)
SUMIF関数は、指定した検索条件に合致するセルの値を合計する機能です。コールセンターシステムやCOUNTIF関数で項目ごとに集計された数値を、さらに再集計する際に役立ちます。条件別に合計できるため、人件費などの経費管理にも有効です。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=SUMIF(範囲, 検索条件, 合計範囲) |
複数条件を指定する場合には、以下の数式を使いましょう。
=SUMIFS(合計範囲, 範囲1, 検索条件1, 範囲2, 検索条件2,…) |
6.XLOOKUP関数(VLOOKUP、HLOOKUPの進化版)
XLOOKUP関数は、指定された範囲または配列内で検索条件に一致する値を検索し、別の範囲または配列から対応する値を返す機能です。初期設定では完全一致検索が用いられます。
従来のVLOOKUPやHLOOKUP関数では、検索キーを特定の列や行に配置する必要がありましたが、Excel 2021以降およびMicrosoft 365で利用できるXLOOKUP関数では、この制約がなくなりました。例えば、社員番号から担当者名を検索する際に役立ちます。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=XLOOKUP(検索値,検索範囲,戻り範囲,見つからない場合,一致モード,検索モード) |
7.FORECAST.ETS関数
FORECAST.ETS関数は、指数平滑化法を用いて、設定した目標日における将来の予測値を算出する関数です。過去の統計データから将来の数値を予測できるため、今後の問い合わせ件数などを予測する際に役立ちます。
実際に、使用する際の数式は以下のとおりです。
=FORECAST.ETS(目標期日,値,タイムライン,季節性,データ補間,集計) |
まとめ:コールセンターのVOCをエクセル以外で効率化するならAI Central Voice
この記事では、コールセンターのデータをエクセルで分析する方法について解説してきました。
エクセルでのデータ分析は手軽に日々の業務効率化やサービス品質向上に活用できます。しかし、データ量が膨大になったり、より深い顧客インサイトが必要になったりする場面では、エクセルだけでは限界があります。
そこで大量のデータを高速かつ高度に可視化するAI Central Voiceを導入すれば、大容量のデータを瞬時に分析できます。
AI Central Voiceとは、AIが課題を特定から解決策まで迅速に提案することで、業務上の意思決定を支援するAIエージェントです。「データ活用をしたいが、何から始めればいいかわからない」という企業が抱える共通の悩みを解決し、従業員一人ひとりがデータ分析の専門家として活躍できるようサポートします。
コールセンター業務においては通話内容を自動でテキスト化し、感情やキーワードを解析することで、エクセルだけでは見えなかった顧客の声を可視化します。これにより、オペレーターの育成や、商品・サービスの改善点も明確になります。
エクセルの分析をベースに、AI Central Voiceを組み合わせることで、データ活用の幅が広がり、コールセンターはコストセンターから企業の成長を牽引する戦略的部門へと進化できるでしょう。